定積分 No.2

\[\int_0^{\infty} dx \frac{\ln x}{1 + x^2} = 0\]

使用するトリック

積分領域の分割を考える.

\[\int_0^{\infty} dx f(x) = \int_0^1 dx f(x) + \int_1^{\infty} dx f(x)\]

このとき次が成り立つ.

\[\int_0^a dx f(x) = - \int_a^{\infty} dx f(x) \Leftrightarrow \int_0^{\infty} dx f(x) = 0\]

導出

変数変換 $t=\frac{1}{x}$ を行って,次のように定積分を評価する.

\[\int_0^1 dx \frac{\ln x}{1 + x^2} = \int_{\infty}^1 \left(-\frac{dt}{t^2}\right) \frac{\ln \frac{1}{t}}{1 + \frac{1}{t^2}} = -\int_1^{\infty} dt \frac{\ln t}{1 + t^2}\]

よって右辺を左辺に移項して,積分領域を統合すれば次を得る.

\[\int_0^{\infty} dx \frac{\ln x}{1 + x^2} = 0\]

感想戦

対数関数があることも考慮して,負符号を出したいために変数変換として逆数をとっている.また逆数が自身に等しい数は $1$ のみであるから $1$ を堺に積分領域を分割できる. 被積分関数が積分領域の内部に特異点がないことも助かった.

さてより一般的に次の定積分を考えてみる.

\[I := \int_0^{\infty} dx \frac{\ln x}{b^2 + x^2}\]

これは最早 $0$ にはならない.つまり積分領域の分割を意図した計算は途中で止まる. ほんの少しの根気と異なるアプローチが必要だが,ここで得た結果は無駄にはならない.

参考